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2004年10月01日

ときにはあなたも その目を閉じて

自転車に乗ると、突発的に、電車と競争したくなることがある(っていうか勝てる気がしちゃうんですよ)。
今朝も、てやぁぁぁぁ、と横須賀線久里浜行に決戦を挑んだら(ちなみに風邪で、<眠気を催すことがありますので、車の運転や危険のともなう機械の操作等には十分に気を付けてください>という注意書きがしてあるクスリを服用している)、前方から白い杖をついた老女と、彼女よりはすこし若い老女が歩いてくるのが見えて、ブレーキをかけた。
その瞬間、久里浜行に追い抜かれた。
線路脇のススキとコスモスの花が電車にあおられて揺れた、急流の水草のように……
ふたりの老女は顔と雰囲気がとてもよく似ていた。
姉妹か?
姉妹だろう。
歳若いほうの老女が、盲目の老女の肩に手を置き、やさしく語りかけるのが聞こえた。

……まだ満開じゃないんだけど、ピンク色がちらほらしていて、とってもきれいよ……

わたしの自転車はふたりの脇を通り過ぎた。
踏み切りの音が流れてくる。
鎌倉駅から東京行の横須賀線が出発し、また、ススキとコスモスが揺れた。
陽射しは暑いのに風は冷たい、秋の朝だった。
わたしは、盲目のひとに、揺れるススキとコスモスの美しさを伝えられるくらい、自分の言葉を鍛えなければならない、と思った。
そして、ふっと、ある歌のはじまりの一節をつぶやいた。

季節が森をさまようとき……

東京キッドブラザースの古いミュージカルナンバ−で、うたったことも聴いたこともないので(東さんの話のなかに出てきた)、正確な歌詞は憶えてないのだけれど(歌詞間違ってたら、ゴメンナサイ)、この詩を書いたのは、全盲で無名の詩人だということだ。

こころ淋しいぼくのため
ときにはあなたも その目を閉じて
きみと知り合えて よかったよ
きみと知り合えて よかったよ

投稿者 柳美里 : 2004年10月01日 23:35

 

コメント

12月生まれの私の名前の由来は、春に咲く桜ではなく、コスモスです。
――と、ひとに話すと、勘違いされて、10月にバースデイカードが届いたりします(笑)。
長い間、コスモスの花は苦手でした。
小学校の校庭の花壇に、毎年たくさん咲いていたので、ただそれだけの理由で。
ポプラの樹も、同じ理由で嫌いでした。

ポプラは、みゆきさんの歌を聴いて以来、少しだけ好きになりました。
“急流の水草のように”揺れるコスモス――、
目を閉じて、想像しています。
美里さんの書かれる言葉、映画のようですね……。
無性に、コスモスを見に行きたくなりました。

投稿者 さくら : 2004年10月01日 23:58

目を閉じると、片目の魔法使いが僕に手招きする。
「こっちの水は甘いぞ・・・」
立ち尽くす僕に、大天使ミカエルは天秤を翳しながら判決を下す。
「おまえはダメだ」
あんたに言われるまでもないっ、自分の事は自分が一番知っている。普くまでもないことだ。
悪の化身セトが、ニヤニヤして長い鼻を横に振る。
「バーカ」と顔に書いてある。
どうしたものか・・・。

マリア様に後はまかせます。  ではでは

投稿者 剣吾 : 2004年10月02日 12:40

とても懐かしいです。私が東京キッドブラザースと初めて出会ったお芝居の中の曲で、今も時々口ずさむことがあります。
何も恐いものがなく、何にでもなれると信じていたあの頃…
何かを見失って立ちすくんでいる今、もう一度「生きて・恋して・夢を見て」素直な気持ちで前に進んでみようかな…
美里さんの言葉が、長い間眠っていた気持ちを呼び覚ましてくれました。

投稿者 りいえ : 2004年10月02日 18:58

柳さん自分も最近自転車買ったんですよ。シルバーの昔懐かしいママチャリなのですけれどね。これがいいんですよう。何かときめくというか、わくわくするというか。自分に向かってくる風がまたたまらない。やみつきです。
実はそんなに早くはないのだけれど、世界最速、世界最高です。

投稿者 : 2004年10月02日 22:57