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2004年09月27日

雨の音がする

今朝は、自分が他人みたいだった。
これはマズイ、と思って、横になった。
いまは、13:00……3時間闘った……なにと?……<わたし>と……。

遮光カーテンを閉めて横になると、部屋じゅうに<わたし>がひしめきあっている。
全部の<わたし>を<わたし>の内にうまく納めないと起きあがれない。
<わたし>のなかで、もっとも無力な<わたし>がそう思い込んでいる。
この感覚と、ものごころついたころから闘ってきた。
14歳のころ、<わたし>は<わたし>に敗けて、起きあがることができなくなった。

眠れればいいんだけど、船酔いのような頭痛と吐き気で眠れない。
ぶつ切れの想念に振りまわされる。

雨の夜だった。
まきさん、という、当時つきあっていたカレの友人の家に泊まらせてもらった。
まきさんは、わたしより10歳ぐらい上だけれど、わたしよりカワイイ感じの女性だった。
翌朝、服を貸してくれた。
クローゼットを開けてしゃがんで捜しながら、「ユウくん、靴下は、やっぱり女の子だから、赤かな?」と訊かれたのを憶えている。
カレもまきさんも周囲のひとたちも、わたしのことを「ユウくん」と呼んでいた。
わたしはジーンズをはいてから赤い靴下をはいた。
その夜、話した内容はなんにも憶えていないのに、なぜ、赤い靴下の周辺だけ昨日のことみたいに憶えているんだろう。
憶えていることが、なぜ、こんなに苦しいんだろう?
雨の音を聴いているうちに、<わたし>のなかのひとりが台所に立って汚れた皿を洗いはじめた。
真夜中。
真っ暗闇で洗いものをしている<わたし>。
台所には水音と雨音が響いている。
ふいに、母が死んだことを思い出し、嗚咽する。
<わたし>も<わたし>も<わたし>も、嗚咽しはじめる。
違う! 母は死んでいない! 生きている!

<わたし>は<わたし>をベッドから引き剥がして、遮光カーテンを開けた。

克ったのではない。
生きている限り、闘いつづけなければならない。
敗けたら……

投稿者 柳美里 : 2004年09月27日 13:20

 

コメント

人は何の為に生きていくのか・・・。己の欲求を満たす事がすべてなのか。
他人に嫉妬し、傍観しては失敗をあざけ笑う。それでも何処か寂しいのだろう、愛を語りもする。
知らん振りをすることで自分を守ろうとするのが大人というもの。
そう、自分の為に生きていくんだ。余計な考えはいらない。己の欲求も他人の欲求と重なり合えば、そこに市場が生まれる。要はビジネス、金だ!
金が無ければ何も出来ないのは周知の如く。タレントが愛は無くても金さえあれば、と恋愛論を語るのと同じこと。
自分の境遇に喘いでいても、割り切る事は出来るはず。金が無ければそれに等しい生活もある。愛がないのなら金で愛を買う事も出来る。精神病なら今は薬で何とか成る。

自分が如何に自分らしく生きられるか、それが全てだと私は思う・・・。   ではでは

投稿者 剣吾 : 2004年09月27日 15:26

僕が中学の頃、制服に赤い靴下で登校した時がある。教師がそれはないだろ、と怪訝そうに言ったのを思い出す。電車で絡まれたり、男なのに痴漢に狙われたりと散々な時代だった。
そして僕は精神を病んでいく・・・。

投稿者 剣吾 : 2004年09月27日 15:52

初めまして。

投稿者 暇船。 : 2004年09月28日 09:04

>全部の<わたし>を<わたし>の内にうまく納めないと起きあがれない。
><わたし>のなかで、もっとも無力な<わたし>がそう思>い込んでいる。
>この感覚と、ものごころついたころから闘ってきた。

この文、心に残りました。
ああじゃないのか?こうじゃないのか?と主張してくる自分が何人か居て、それを聞いてどうにもできなくなっている自分も居る。そして、自分の体はどうにもできなくなってる。ときに、その主張してくる自分が心に納まりきらず、飛出してコントロール不能に陥ってしまうこともありました。

でも最近、そういったいろいろな自分と正面から向き合えなくなってきた。フタをするようになってきた。しんどいから。たぶん、無理矢理納得させたり、気を紛らわせたりしているんだと思う。

でもなんとなくそれも嫌。ウソついているみたいだから。本当の心の叫びには耳を傾けていたい。生きることに一生懸命になってみたい。

>克ったのではない。
>生きている限り、闘いつづけなければならない。
>敗けたら……

この最後の文、やっぱり、柳美里さんって闘ってるんだと思いました。身を削りながも必死で、偽ることなく。
そんな姿から勇気をもらいます。必死で戦ってるんだから僕も・・・

勇気をありがとうございます。これからも応援します。

投稿者 走りたい。 : 2004年10月05日 23:41