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2004年05月20日

夢に感光される

起きたときは、はっきりと細部まで辿れたのに、いまはぼんやり、うっすらとしている。
どこにもでこぼこがない(スケート場みたいにまっ平らな)舗装道路……。
100メートルぐらい先にくだり坂があるらしく、道は突然滝のように落ちている。
海……水平線の丸み……。
左側になにかの店が3軒ほどあったはずなんだけど……思い出せない。
風が吹いて、道の左右の緑がざわめきはじめる。
でも、音はしない。
なんの音もしない。
走ってる。
車に乗って?
スクーター?
自転車?
ふと、目を逸らした隙に、となりにいた東さんが前を走ってる。
「東京湾が一望だよ」といって、下り坂に消えた。
走っても、走っても、前に進まない。
追いつかない。
足踏みだ。
「待って! わたしを置いてかないで! 去かないでぇぇぇぇぇ!」
声が出ない。
「死なないでぇぇぇぇぇぇ!」
自分の泣き声で目を醒ました。
しばらく泣いて、泣きながら夢を辿った。
いま、気づいた。
夢の風景には影がなかった。
木々にも葉にも、東さんにも、わたしにも……
真夏の照り返しの強い光だけしかなかった。

投稿者 柳美里 : 2004年05月20日 10:30

 

コメント

真夏の照り返しの強い光だけしかなかった。

柳さんの中にはこういう光景が強い残影となって曳いているようですね。

『潮合い』にも、

影が無い。真夏の陽射しが油を零したように校庭いっぱいにあふれているのに、水呑場、樹々、鉄棒などに影が無いことが不思議だった。

投稿者 喜多圭介 : 2004年08月13日 06:17