2004年05月18日
昼も夜も、やむことはない。
「8月の果て」を構想した(実は、処女小説「石に泳ぐ魚」を書く前に、この物語を最初に書こうと思っていたんです)15年前から、気になりつづけていた言葉があった。
だれが書いたのか、どこで読んだのかも忘れ、正確な文章としても思い出せない。
<人体><永久運動>というふたつの言葉だけが、しこりのように残っていた。
その言葉が、ものごころついてから走りはじめ、死の前日まで走っていた、長距離ランナーだった祖父の姿と結びついたわけだが……「8月の果て」の連載を開始し、朝日の担当者に調査を依頼したところ、だれに訊ねても「そんな言葉は知らない」といわれたそうで、わたしの思い違いだったのかも、と諦めかけていたのだが……先日、押井守監督の「イノセンス」を観たら、出てきた!! 映画館から帰宅して、ネットに詳しい友人に検索してもらった。見つかった!!
人体は自らゼンマイを巻く機械であり、永久運動の生きた見本である。
ラ・メトリという17世紀フランスの医師・哲学者が書いた『人間機械論』のなかの言葉だった。
物語のゴールが見えてきたときに、スタート地点に立つはるか以前に出逢った言葉と、偶然、再会を果たすなんて……縁ですね。
投稿者 柳美里 : 2004年05月18日 12:17