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2004年03月17日

いま、背筋を伸ばして、椅子に座ったところです。

昨夜から、ここには、たくさんのひとびとが押し寄せているようです。
わたしを心配してくださる読者のみなさんをはじめ、10代のころいっしょにボイストレーニングを受けていたようこちゃん(憶えていますよ、ポニーテールがかわいくって、白いモヘアのセーターとミニスカートがよく似合ってた)、わたしが20歳ちょっとのときに書いた戯曲「棘を失くした時計」と「石に泳ぐ魚」(本には収録されていないから、みなさんは読んだことがないですよね)の重要な役を演じたかみむらさん……2ちゃんねるから覗きにきたみなさん……わたしはすべての書き込みに目を通しています。

新聞、週刊誌から、取材の依頼もきていますが、(いまのところ)口を噤んでいます。
しかし、今朝の「読売新聞」「産経新聞」「報知新聞」に書かれていたことは、「わたしの事実」とは大きく異なります。
違う!
ぜんぜん違う!
キオスクで新聞を買って、立ったまま叫びました。
違う!

ひとつだけいえることは、「8月の果て」はわたしにとって非常に大切な作品だということです。
もちろん、作家にとって、自分の作品はどれも我が子のように大切なのだけれど、この作品は、言葉を発することができず(拷問され、陵辱され、生き埋めにされて)殺された、その存在さえも認められていない死者たちの声に耳を澄まし、その声を(聴こえるままに)書き留めた作品なので、死者たちの名に賭けて、このまま流産させるわけにはいかないのです。

わたしの(8年間にわたる「石に泳ぐ魚」裁判を共に闘い抜いた)戦友、『新潮』の編集長、矢野優さんに昨夜電話しました。
死ぬ気で、「8月の果て」(約180枚)を書きあげ、来月7日発売の『新潮』に一挙掲載します。
まず、それを書き、それをみなさんに読んでいただくしかありません。
いま、わたしは骨を意識しています。
「鶴の恩返し」の鶴は羽を抜いて機を織っていたけれど、
わたしは、自分の骨を1本1本引き抜いて、書く。
書く。

猿轡をかまされた死者たちよ、わたしの耳に言葉を吹き込んでください。
読者よ、わたしの骨(言葉)を拾ってください。

投稿者 柳美里 : 2004年03月17日 17:10

 

コメント

初めてあなたの存在を知ったのは、
週刊誌の新聞広告でした。
新聞下方の広告でなぜか、
週刊誌の表紙のあなたの写真と
岸田戯曲賞史上最年少受賞の記事の
見出しが目につきました。
後日、新潮に小説「石に泳ぐ魚」が
載っていることを知り今まで新潮を
購入したことを覚えています。
その後、書店であなたの本を見つける
たびなぜか手にとってしまいます。
あなたにとっての家族、私にとっての
家族。私の中で重複するところが
あったのかもしれません

しかし、命は読めませんでした。
母が、癌と戦っているとき私は
妊娠しました。
相手は、妻帯者でした。
子供をおろすため向かった産婦人科の
待合室で悪阻の苦しさから逃れるために
なにげなく手にとった週刊誌に連載が
ありました。
私は母に生きてほしいと思うのに
子供は殺す。
仕事、世間体、将来、自分のエゴのために
殺し、自分のエゴで苦しんでる母に
がんっばってと言う。
週刊誌の数頁の文章は、そんな私に深く重く
のしかかってきました。
子供を殺し、母は死にました。
あれから3年たち、命を読みました。
止まらなくなり、残り3冊も読みました。
もっと、早く読めばよかったと思います。

なぜかあなたの綴る言葉に心惹かれます。
もうすぐ桜が咲き本格的に春がやってきます。
何もいえませんが、
自分の生活と無関係な人にこういった感情を
持ったことは初めてなので
どういって良いのかわかりませんが
生きてほしいと思います。

生きたい、生きるため普通の生活をするため
それだけのために戦っている姿
電車の中でも、涙を止めることはできませんでした。

投稿者 kerota : 2004年03月18日 14:28

柳美里様

体を……あなたの体を、とにかく大事にしてください。
一度の瞬きもせずに、みひらいた目でまっすぐ前を見つめているような、必死の姿が痛いです。
今のあなたの痛みを痛むことは私にはできませんが、
どんなに些細な日常の中からでも、通りすがりの出来事の中からでも、美里さんが微笑むことができる何かが降り落ちますようにと願っています。
書くことも、語ることも、丈陽君を抱くことも、
体あってこそ、命あってこそです……。
『新潮』への掲載、心待ちにしてはいますが、
決して無理はなさらないでください。
空から落ちてくる赤ちゃんを受け止めるように、
あなたの真摯な言葉を、両腕で必ず抱きとめます。

投稿者 さくら : 2004年03月23日 01:00

[水辺のゆりかご」を読んだときから私はあなたの作品のとりこになりました。あなたは頑張っている。頑張って生きている。そんなあなたが好きです。「8月の果て」必ず読みます。どうか、お体を大切に。私はあなたの作品の読者、あなたの味方です。

投稿者 M.O : 2004年03月28日 01:53

柳美里様

ごくありふれた日常を送っている私も、
あなたの読者です。

自傷も、引きこもりも、不適合も、
堕胎も、出産の経験もない、あなたの読者です。

傷で共感しなくても、
あなたの言葉の力は、私に響いています。
「闇で照らしたい」言うあなたと、
太陽の下でふと闇を見る私は、
あなたの言葉を真ん中にして、
ぐるぐると繋がっていくように感じます。

今も、これからも、あなたの言葉を待っています。
普通に生活を送りながら、
桜の下で犬を遊ばせながら、
あなたの本を楽しみに待っています。

投稿者 cebola : 2004年03月29日 11:55

柳 美里 さま

私はあなたの本を二十歳頃から読んでいます。
脳天を突き刺すような他の作家の誰にも真似できないような激しくて繊細な文章の力にただただ圧倒されました。たけはる君と私の娘は一歳違いですが、命シリーズの内容が私の体に深く入って共感して涙が止まりませんでした・・・
人に言えないような罪な事ばかりしてきた私ですが
苦しくても生きていこうと思います。
私たちがこれからもあなたの文章を読めますように・・・どうぞお体ご自愛下さい

投稿者 4clober : 2004年05月10日 10:17

柳美里様
私が柳さんの本に出会ったのは母が癌で闘病している時です。「癌」に関する本を目に触れる都度買っていました。
「命」を読み終え何度も読み返し、文庫本から魂まで殆ど読みました。
私が本にのめり込むのは初めてで、柳さんの文章に魅かれていきました。
大好きです!

投稿者 ようこ : 2004年05月17日 19:54